>>「軟らかな資本主義」原稿へ<<
99年5月
毎日の様に失業率の上昇が報じられています。本日の朝刊(5月3日)は、訪米中の小渕総理大臣のシカゴでの演説を報じています。経済学のシカゴ学派に対して、弱肉強食のアメリカ式資本主義でなく、日本的な資本主義があっても良いのだ、と皮肉を込めて精一杯の反論を試みているのです。
戦後の日本のやり方が全て間違っていたわけではありません。日本人はどうも舞上がったり落ち込んだりするのが極端すぎます。全国民がまるで躁鬱病に苦しんでいるように見えます。
もちろん明治以降、賢明に西洋文明を採り入れてきた日本人の事ですから、いずれは今のような経済状況から脱却するでしょう。
しかし、良く比較される明治維新、太平洋戦争後の頃とは、状況はかなり違うように思えます。それぞれ苦難の道だったわけですが、現在の方がずっと難しいように私には思えます。なぜなら歴史上初めてこれだけ豊かな日本を築き上げてしまった現在、精神的な支えを何に求めるか、その柱を失っているように見えるからです。貧しい時はあまり問題にならなかったのでしょうが、豊かになれば、衣食足って礼節を知る必要があります。
生意気かも知れませんが、貧しい中で健気に生きる事より、豊かな日常の中で気高く生きる事の方が、よほど苦しく、難しい生き方のように、私には思えるのです。物に満たされ、食に事欠かない現代の日本人にとっての、新しい精神的な支えを構築する必要があるのではないでしょうか。何を精神的な柱にし、日本人としての誇りを何に求めて、私達は子どもたちを育てて行けば良いのでしょうか?
きちんと今議論をしておかないと、21世紀の日本が取り返しが付かないことになりはしないか、それが私は心配なのです。