2013年2月28日(木曜日:曇)


スペインと私

 沼津西ロータリークラブでの卓話

 スペインというと、「太陽と情熱の国」、あるいは、「闘牛とフラメンコの国」などと形容されます。しかしスペインの歴史を辿ると、意外や意外、そこには今日に繋がる重要な要素を孕んでいます。スペインは現在EUの一員として、重要なメンバーの一つですが、かつて800年近くに渡ってイスラムの支配を受けた歴史があるのです。今でもスペイン語の語彙のうち一割はアラビア語起源だと言われています。しかも、イスラム・スペインは当時最高の文明を誇り、古代ギリシャ時代の古典をアラビア語を通してラテン語に翻訳することで、ヨーロッパにルネサンスをもたらしているのです。

 また、イスラム統治時代はユダヤ人の首相が二人も輩出するなど、人種や宗教に関わりなく能力を発揮することのできた稀有な時代でもあったのです。

 1492年にグラナダのアランブラ宮殿がカトリック勢力の手に落ち、国土回復運動は終結しました。同年セビリアから船出したコロンブスのアメリカ大陸発見により、スペインは黄金の時代を迎えますが、イスラム教徒、ユダヤ教徒を国外追放することで、やがてスペインは黄金に囲まれながら転落の道を歩むのです。

 21世紀に入り、文明の衝突が叫ばれ、宗教間の対立が先鋭化しています。そのような現実をみるにつけ、スペインの歴史から、寛容とは何か、調和とは何かを学ぶことは、まさに焦眉の急のように私には思えるのです。