沼津発世界便(1997年1月掲載)

 12年前の投稿です。ずいぶんと昔の内容に思えます。提言がいかにも古めかしいからです。ほとんどが既に実現しています。気恥ずかしい気すらします。

 ホームページを持たない企業をホームレスと言う、何ていう冗談は今では死語でしょう。

 数年前からはブロッグと呼ばれる形式により、ホームページよりもさらに簡便にインターネット上での発信ができるようになりました。ハード・ディスクなどのIT機器価格や通信費の下落により、無料で受けられるサービスは目白押し。

 何より人々は新聞を読まなくなりました。アメリカでは新聞社がバタバタと倒産しています。日本でも大手の全国紙は、軒並み赤字に転落。12年前には想像もできなかった激変が世の中を覆っています。

 始めてホームページを立ち上げた1996年には、Googleの検索サービスなどありませんでした。今では想像もできないことですが、自分のホームページが出来上がったことを、あの頃ですとニフティーという玄関口になるサイトに登録していたのです。ホームページを作ったということだけでもニュースになっていたのです。

 今ではすっかり転落してしまったライブ・ドアのホリエモンも、自身のビジネスの始まりはホームページの制作業だったのです。

 Googleの登場で、インターネット上の情報はまさに自分自身の、いわば蔵書にすらなりました。ある評論家は、本など買う必要はない、殆どの情報はインターネットで間に合うから、とすら言っています。

 しかし、だからこそ、その地にしかないものこそが地域を輝かすのです。

(2009年1月)

ホームページ掲載時コメント

 世界は一つになろうとしています。少なくとも、お金は国境を越えて自由に移動しています。それを止めることは出来ませんし、移動を制限すれば、逆に国の活力を低下させます。世界のどこでも、魅力あると判断すれば資本はそこへ移動するのです。

 そんな時代に、地域が魅力ある存在であり続けるためには、何が必要なのでしょうか。やはりそこに住む人が、一番の資源ではないでしょうか。これからの知価革命といわれる時代には、今までの様にただ言われた通りに丸暗記することが、もっとも評価されるような、そんな教育では決して魅力ある人間を育てはしません。

 日本人には独創性が乏しい、という意見をよく耳にします。これは私自身の経験からすると、間違いだと思います。決して日本人に独創性が乏しいのではなく、日本の社会自体にそうした芽を発見し、育て、そしてそれを活用するシステムが無いのです。というよりは、はっきり言えば、人の上に立つ指導的立場にある人々に独創性を発見できるだけの能力が無いのです。

 いや発見できるのかも知れませんが、失敗の可能性のあるそうした独創性にかけるだけの、胆力が無いのです。ようするに、1億総お役所体質なのです。まず無難な線で行こう、というわけです。失敗してもそれなら責任を取らされる心配がありません。失敗すれば、世間をお騒がせして申し訳ありません、と頭を下げれば済むわけです。ところが人と違ったことにかけて失敗したら、これは大変です。非常識だ、となりまず再起できません。世間を騒がせただけでは済まないのです。

 毎日のように新聞紙上で見かけるこうした茶番のような記者会見をみるたびに、本当に日本っていう国は面白い国だ、と思います。一体誰に対して申し訳ない、と陳謝しているのでしょうか?もちろん自分がその立場なら、同じように頭を下げるでしょう。それが一番無難で世間に認められるからです。

 これからもこうした事を繰り返して行けるのでしょうか?それでも日本は世界が羨むような成熟国家になれるのでしょうか?。そんな思いで書きました。

 沼津から世界へ向けて飛行機を飛ばそう、というのではないのです。先月半ば、念願のホームページを立ち上げました。要するに、インターネット上に自分のアルバムを作ったようなものです。さっそく友人達に、暇があったら見て下さい、というメイルを送りました。

 アメリカ、カナダ、ドイツなどから、「読ましてもらったよ」という趣旨の返事をもら いました。特別な才能や高価なハイテク機具が無くても、世界に向けて情報を発信できるのです。

名古家のホームページへ

 先日朝日新聞夕刊が、ローマで行われた世界食料サミットにおいて、日本人記者に感想を求められた藤本農水相が、後ろに控えている官僚に答えを促した、という記事を掲載していました。そうした大臣の行動を記者は、「実に情けない」と書いていましたが、こうした現実を我々は極めて深刻に受け止める必要があります。これは語学力の問題ではないのです。質問は日本人記者からなされているにもかかわらず、感想すら自分の言葉で語れなかった、という点は大変重要です。

 ボーダレスといわれ、大競争時代ともいわれる現在、ある国、ある地方が繁栄し魅力ある地域であるためには、何よりもそこに住む人々に魅力がなければいけません。その一つに、いかに情報を発信できるか、という点がこれからますます重要になって来ます。今自分が何を考えているのか、何に取り組んでいるのか、そしてこれからどうしようとしているのか、などの点をきちんと自分自身の言葉で、他人に分かる形にまとめる必要があるのです。

 こうした点から、沼津市民一人一人が情報を発信する手段として、ホームページはうってつけです。特に大切なのは、将来を担う子ども達が、いかにしてこうした能力を習得するかです。そこで私は以下のプランを考えました。

(一)沼津市自身が情報の中核となるサーバーを設置する。

(二)このシステムを利用して、市内の全小中学校でホームページを立ち上げる。

(三)そのためには、現在各学校に配置されているパソコンを利用する。

(四)さらに、地元企業で利用されなくなった旧式のパソコンを、学校へ寄贈してもらう。

(五)現場の先生方に負担をかけないように、ホームページ作成には地元の企業、並びにボランティアを活用する。

 それぞれの地域には必ず立ち上げに必要な知識を持った方がいるはずですから、協力を求めるべきです。地域が一体となって取り組むのです。

 こうした努力によって子ども達は、自らの言葉で自らの考えや活動を世界に向けて発信できるのです。これこそ、沼津発世界便なのです。こうした地道な活動が、沼津から魅力ある人材を輩出し、必ずや沼津発展の一助となるはずです。新市長も誕生しました。道路やビルの建設、駅の高架化ももちろん大切でしょうが、それだけでは「仏作って魂入れず」なのです。そこに住む人々が活力と魅力に富まない限り、沼津の発展はありえないのです。



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