読書の行方

読書の行方
2011年6月21日

 
 多くの人が、読書を趣味の一つとしてあげます。活字離れが叫ばれる昨今でも、地域の書店に立ち寄ると、いつも多くの人で混雑しています。読書をする、とは現在では本を読むことと同義語なのですが、そんな常識を覆す、ある報告が先日なされました。

 アメリカのネット通販大手のアマゾン・ドット・コム社(以下アマゾン社)の発表では、同社が販売する電子書籍端末キンドル向けの販売書籍数が紙の書籍の販売数を上回ったというのです。音楽はCDで買うのではなく、ネットで購入し端末で楽しむ、というスタイルが日常的となったように、アメリカでは、いよいよ書籍にもそうした時代が到来したのです。

 こうした電子書籍端末に対し、私自身はこれまで懐疑的でした。百冊近くの古典を収録したCDを購入しパソコンで楽しもうと以前試みたのですが、一日で止めました。パソコンで本を読むというのは、かなりの負担を目に強いるのです。ところがアマゾン社のキンドルを個人輸入して試したところ、それまでの考えが180 度変わりました。

 キンドルは、いわゆるスマートフォンやタブレットと呼ばれる液晶端末と異なり、特殊な電子インクを用い、書籍と同じ、いや私の印象ではむしろ文庫本などより、ずっと目に負担をかけずに長時間読書をすることが可能です。しかも一台に3,000 冊以上も収納できますので、いわば個人で図書館を持ち歩いているようなものです。新書より一回り大きく、241 グラムの重さは持ち歩くにも苦になりません。一度充電すれば、二週間以上その必要がありません。携帯電話とは大きな違いです。

 残念ながら日本では、アマゾン社は日本語の書籍をネット販売していませんので、手に入る日本語の書籍は、「坊っちゃん」など版権の切れた古典に限られます。キンドルの画面に最適化されたものがネットから容易に手に入るよう有志の手で整備されています。また自分の書棚に読まれずに眠っていた本を送ると、スキャンしてデジタル化し、キンドルに最適化されたファイルをネット経由で極めて安価に返却するサービスが、現在では利用可能です。書籍は劣化が避けられません。さらに、いったん絶版になると手に入れるのは困難です。大切な本ほど、むしろデジタル化し端末に保存しておいた方が、ずっと安全でもあるのです。

 キンドルの使用で電子書籍に対する私の考えは、180 度変わりました。これほどの新鮮な驚きを受けたのは、20 年近く前に出会ったインターネット電話以来です。時代は今、大きな節目を迎えています。