その状況を地元の新聞に投稿した原稿です。

 

沼津朝日新聞「いいたい放題」投稿原稿
1998年10月(アイルランドへの道

 

 学会の帰り道、アイルランドに先日行ってきました。かの地に住むリチャードさんが、遊びにこないかと誘ってくれたのです。一度も会ったことの無い彼のために、なぜわざわざアイルランドにまで出かけたのか。それには3年余りにわたるインターネット上での交流があったのです。

始めて言葉を交わしたのは、本当にひょんな事からでした。当時、始めて間もないインターネット電話の出会いの広場で、たまたま彼の名前を選択したのがきっかけでした。アメリカに生まれ、大学ではアジアを専攻し仕事の関係で台湾に長く住んでいたリチャードさんには、教わるところが大でした。そんな彼が、66 歳になる今年アイルランドに移住することになったのは、ロンドン生まれながら、もともと両親をはじめ一族がアイルランド出身の奥さんの希望でした。

予定では、オランダのスキポール空港からロンドン経由で、アイルランドのコークへ向かうはずでした。ところが当日空港へ行ってみると、何と予定便はキャンセルになったとのこと。受付の話では臨時便が出るので心配はない、と言うのですが、乗り継ぎをしなければならない私は、心配でたまりません。そんな時、待ち合いロビーである老人が、臨時便はロンドン・シティー(LC)空港に着くので困る、と息巻いています。実はその時まで、ヒースロー空港など四つの飛行場がロンドンにあることを、私は知らなかったのです。予定便はスタンステッド空港に着く予定でしたが、臨時便はLC空港に着くらしいのです。慌てふためいてカウンターに駆け込み拙い英語で聞きただすと、すべて手配済みなので何の心配も要らないとの説明。とにかく待つしかありませんでした。

ようやく臨時便が出発したのは、予定時間を3時間近く過ぎて後。そしてロンドンに到着したのは、乗り継ぎ予定時刻の25分前。乗り継ぎ空港までは高速道路をどんなに飛ばしても50分は最低かかる、との話。これでリチャードさんとは、ひょっとするともう会えないかもしれない、と覚悟を決めたところ、移動のタクシーに乗りあわせたイギリス人が、「君はラッキーだ。オランダとイギリスでは一時間の時差があるからね」と教えてくれたのです。実は、残り時間は二十五分でなく一時間二十五分だったのです。

高速道路を飛ばして空港に着いたのは、出発の二十分前。ほとんどを高速道路上で過ごした一時間ほどのイギリス滞在の後、駆け込むように搭乗したアイルランド行きの飛行機は、タクシーを追いかけるようにしてやって来た夕闇を振り切るように、こうしてロンドンをあとにしたのです。

■雨の中ライアン航空の飛行機は静かにアイルランドの地に舞い降りたのです。到着口にはリチャードさんご夫妻が待っていてくれました。と言っても、実はリチャードさんには一度も直接お会いしたことがありませんでした。インターネット電話のWebカメラでお互い顔を見ていただけ。考えてみれば無謀な旅でした。

空港からレストランに一直線。黒ビールで乾杯です。

奥様とご一緒に。

自宅の庭でリチャードさんと

お庭の広いこと。牛を放牧できそうです。

家の周囲は、まるでゴルフ場の中の住宅地。

国全体が巨大なゴルフ場のように思えました。

To:アイルランドの白馬