地球市民 (1997年10月掲載)

 学校でインターネットを利用することは、今では当たり前。驚くことでも何でもありません。学校中のパソコンがLANで結ばれ、どのパソコンからもインターネットに接続できる時代です。

 思い返してみると、パソコンをし始めた1990年代初頭ではパソコンはそれぞれがバラバラに動いているのが当たり前。「Stand Alone」という言葉もありました。

 ケーブルで結ばれた二台のパソコン間でデーターのやり取りができた時は、本当に驚いたものです。

 まだまだインターネットが珍しかった1997年に地元の小学校でパソコンを利用したインターネット電話の企画は、結構インパクトがありました。子ども達の実に生き生きとした眼の輝きが忘れられません。

(2009年1月)

ホームページ掲載時コメント(1998年)

 10月19日に開催された原東小学校の「フェスタきらぼし'97」で、子ども達と一緒にインターネット電話を楽しみました。一父母として学校や地域のために何か出来ないだろうか?、と考えた末、自分が楽しんでいるインターネットをしてみよう!、と思い立ちました。パソコンは学校にあります。ただし適当な回線がありませんし、学校では今だにインターネットなんて、どこか別世界の事にしか過ぎませんから、実際セットアップするのは大変です。

 こういう時に助けてくれるのは、「人財産」です。まず回線料を工面しなければなりません。しかも継続させるとなると、適当なパトロンを確保する必要があります。そこでロータリークラブの登場です。青少年育成委員会、社会奉仕委員会と掛け合い回線費を捻出しました。次にプロバイダー、つまりインターネットに接続するための費用が必要になります。これは以前医師会でお世話になった、WEB静岡の和田喜充(よしみつ)さんが、子ども達のためならと、休日にもかかわらず快く引く受けてくれました。

 さていよいよ当日になりましたが、実際にセットアップするのは、自分が思っていたよりずっと面倒でした。ISDN回線を引きましたが、私は利用したことが無いので、すべて和田さんにお願いするはめになりました。学校のパソコンにはインターネット利用のための準備は全くされていませんから、文字通り一からの立ち上げ。和田さんにお願いしておいて良かった!!、と胸をなでおろしました。

 実際始めてみると子ども達は、後ずさりするばかりで、積極的な参加、というわけには行きませんでした。それでも、遠巻きに興味津津といった様子でした。小学生では英語はまだ遠い存在ですから、これも致し方ないでしょう。挨拶のカードを見本に作っておくとか、来年の課題としてたくさんの準備が必要なことが分かりました。

 10月19日に原東小学校PTAの”フェスタきらぼし'97”がありました。父母の一人として、自分にも何か手伝えることはないかと考え、図工室の前に、 ”ようこそインターネットの世界へ”のテーマのもと、パソコンランドを設置しました。沼津西ロータリークラブの資金的援助を得て電話回線を設置し、学校にあるパソコンを利用しました。パソコン指導担当の飛田教諭、またWEB静岡の和田さんなど、多くの方々の御協力を得て、実現にこぎつけました。

 当日はお絵描きソフトやネットサーフィンを楽しんでもらいましたが、私の担当はインターネット電話でした。当日接続可能だった、おもにアメリカの方々と、子ども達を交えて会話を楽しみました。子ども達は興味を持って眺めているものの、最初はなかなか参加しようとはしません。「おねえちゃん、お名前は?。花子ちゃん。それじゃ、自己紹介してみよう!」といった感じで会話を取り持つわけです。

 ギリシャのNTさんと話をした時は、「オリンピックのことを聞いてみよう!」ということになり、「ギリシャはオリンピック発祥の地ですね。来年長野で冬季オリンピックが開かれます。」と言ったら、驚いたことに来年日本でオリンピックがあることを知りませんでした。もっとも、リレハンメルがどこの国だったか、にわかには思い出せない自分も人の事は言えません。

 コロラド州のビルさんとのお話は大変面白いものでした。ある子どもが、「野球の事を聞いてみよう!」というので、「野茂投手を知っていますか?」と聞いたところ、「自分は3回ロッキースタジアムに出かけてドジャース戦を観戦したが、3回とも野茂が登板し、ロッキーズは負けばかり。おまけにノーヒット・ノーランまでされてしまった」と言うのです。「それじゃ、野茂はロッキーズの天敵ですね?」と尋ねると、「そのとおり!」と答えていました。アメリカで活躍する彼のおかげで、会話が弾みました。

 それにしても、当日話したアメリカ人達の忍耐強い親切心には頭が下がる思いでした。がやがやと騒々しい周りの様子を分かった上で、次から次へとマイクの前に登場する子ども達の拙い英語に付き合い、聞き取りにくいこちらの状況を察して、本当に基本的な英会話の質問を、何度も何度も繰り返してくれた上に必ず、「あなたの英語はとても上手だよ」と、子ども達を褒めてくれるのです。もし逆の立場だったとしたら、はたしてあれだけ忍耐強く、しかもサービス精神を持って人を褒めるだけの心の余裕が自分にあったかどうか、その自信はありません。私が子ども達に知って欲しかった、自分も地球市民の一人なんだ、という実感と共に、そんな心のゆとりの大切さを教えてもらった一日でした。



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