映画の中のゴルフ



2013年新沼津カントリークラブ会報新年号

★ 映画の中のゴルフ ★


 映画俳優モンゴメリー・クリフトがフェアウェイバンカーで亡くなった、と聞くと多くの方が驚かれるはずです。昨年の大西杯でバンカーから二度もホームランして沈没した私と同様、あまりに酷いバンカーショットに心臓発作を起こして突然死した、わけではないのです。映画「地上より永遠に」の中で彼が演じた上等兵が壮絶な死を遂げたのが、ソニーオープンでお馴染みのワイアラエ・ゴルフカントリーのバンカー内だったのです。何事にも器用なのだが、生き方だけが不器用な主人公が街のダンサーに恋に落ち結婚を申し込むのですが、こう言って断られます。『私は兵隊とは結婚しないと決めているの。本国に帰ったら家を買って母と一緒に暮らすの。そしてまともな職業のまともな男と結婚し、まともな家庭を作るの。カントリークラブにも入って、ゴルフを楽しむつもり』。1941年を描いたこの映画は、当時の中産階級の夢をこんなふうに語っています。数ある戦争映画の中で、主人公がバンカーの中で死を迎える映画があったことを記憶しておくのも、ゴルファーのたしなみかも知れません。

 彼と正反対に見事なまでに美しく生き抜いた、といえば球聖と崇められるボビー・ジョーンズです。彼の生涯を描いた「ボビー・ジョーンズ(救聖とよばれた男)」を観ると、実は意外な面を知ることができます。順風満帆、挫折とは縁の無かったかのように思われがちですが、意外や意外。あまりのストレスに胃痙攣で嘔吐を繰り返したり、いわゆるイップスに苦しめられたり、見事な引き際と思われる引退についても、ジーン・サラゼンのこんな回想が残っています。『28歳で引退の原因はパットでの大きめのテークバック』。とは言え、グランドスラムを達成した後28歳で引退し弁護士として活躍しながらマスターズ・トーナメントを創設したとなれば、誰にも真似のできない人生でした。

 ジョーンズがあまりに有名なために忘れられがちなのが、アメリカゴルフ界の父と呼ばれる、フランシス・ウイメットです。激戦の末に彼が死闘を制した1913年の全米オープンを描いたのが、「グレイテスト・ゲーム」。当時ゴルフは上流階級のもの。貧しい労働者の家庭に生まれた彼は、偏見と闘いながら見事チャンピオンとなります。奇しくも激闘を演じたハリー・バートンも英国ジァージー島の貧しい家庭出身。バートン自身も偏見と闘いながらの人生でした。ウイメットは生涯アマチュアを貫き、実業界でも成功し、経済的に恵まれないキャディーの若者のために現在も続く奨学金を創設し、4,200名以上が大学に進学しています。

 そして最後に紹介するのが、ロバート・レッドフォート監督作品「バガー・ヴァンスの伝説」。天才的ゴルファーが第一次世界大戦従軍での悪夢から立ち直れず、自分のスイングを見失ってしまう。そんな彼が謎の人物バガー・ヴァンスが務めるキャディーの力を借りて魂のスイングを取り戻す、という物語です。

 こうして幾つかの映画を観た後で一番印象に残った場面は、バガー・ヴァンスの伝説のラストシーン。名優ジャック・レモンの遺作となったこのシーンは、主人公を傍らで応援していた少年が旅立ち間近の老人となり、子供の頃見つめていたゴルファー達を思い出しながらカートを引き、一人フェアウェイを歩く場面なのです。

 彼は、こう呟くのです。『年寄りたちが、こんなけったいなゲームに一喜一憂しているのを見て子供心に不思議に思ったものだ。つい昨日の事のようだ。でも結局大したことじゃない。バガーが言っていたように、このゲームに勝つことはできない。ただプレイするだけさ。だから、これからもプレイを続ける。まだ出会っていない瞬間のために。このフィールドで自分だけの場所を探し求めて』。

 そう、ゴルフは人生そのものなのです。