窓を開けて(2002年1月掲載)

 21世紀に入っての10年間は、まさに山あり谷ありでした。バブル後の不況から中国を初めアジア諸国の経済発展に助けられ、輸出を中心に景気の拡大を謳歌しました。

 そして、金融危機。また元に戻ったかのようです。2010年からの10年間。はたしてどのような経過をたどるのでしょうか。なんにしても勇気を持って立ち向かうしかないのです。

(2009年2月)

ホームページ掲載時コメント

 一年ぶりの原稿でした。

 日本は大きな曲がり角にあります。今までの生き方が、通用しなくなったのです。それでも、考えようによっては、新たなチャンス、ととらえられなくもありません。

 そう考えられる人間が、次の時代をリードするのでしょう。それには、まず勇気がなければ。


 ニューヨークにおけるテロ事件、アフガニスタンでの戦争、そして史上最悪の失業率と、21世紀は多難な船出となりました。中国を主とする工場の海外移転によって、日本の製造業はまさに崖っぷち。戦後、焼け野原からの懸命の努力が実り、1981年以降、輸出は必ず輸入を上回るようになりました。ところが最近の日本は、2001年9月まで連続15ヶ月、前年同月比で貿易黒字が減少し、ある調査によれば、2006年からは貿易赤字に転落する危険性すら指摘されています。まさに、崖っぷちなのです。

 そんな中での、昨年12月1日の敬宮愛子さまの誕生は、国民の心に明るい光を灯してくれました。皇太子さまご一家が宮内庁病院から東京・元赤坂の東宮御所へ移られた8日、沿道には約3500人の市民が集まり、祝福の声が上がりました。その様子を報道するテレビ映像の中で、私が一番印象的だったのは、皇太子殿下、雅子様が周囲の指示に反して、車の窓を全開にして沿道の観衆に手を振られている場面でした。お二人の晴れやかな笑顔の中に、国民との壁を取り払い国民と共に生きていくのだ、という強い決意を見たからです。

 戦後の日本は一つの頂点を極めました。物質的に豊かになる、という国民的目標が達成されたのです。しかし、衣食足って礼節を知るはずが、残念ながら礼節を忘れてしまっているのが現状です。テレビを付ければ、流れてくるのはグルメ番組ばかり。不況といいながら、ブランド物を買い漁る人の列は跡を絶ちません。暖衣飽食、パンとサーカスの日々とは、まさに日本の現状です。こんな生活が長続きするはずがありません。バブルの精算は、企業だけの問題ではなく、私たち一人一人の問題でもあるのです。

 それでは、建て直しのために私たちは何から始めたら良いのでしょうか。お二人がされたように、まずは窓を開けて、外気を取り込むことから始めてみてはどうでしょう。そして、本当の幸せは心の中にあるということや、国や会社に全てを委ねるのではなく、物まねでない自分自身の人生を自らの力で築き上げるのだ、という当たり前のことを、澄んだ冷たい外気の中で再確認するのです。お二人の行動から我々が学ぶべき点は、生まれて間もない我が子を胸にあえて窓を開けた、その勇気ではないでしょうか。



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