21世紀への道 (1999年1月掲載)

 この原稿を読むと、その頃のことが偲ばれます。インターネットを思う存分楽しむことが、まだまだ高嶺の花だったことが分かります。その後ネットバブル、小泉改革を経てホリエモンが転落しました。

 結局、ニュー・ビジネスとして生き残ったのは現在では楽天をはじめ、数社に過ぎない、と言われています。100年に一度の金融危機の今、派遣切りなど、また時代の閉塞感に苛まれています。

 経済学者 中谷巌さんの転向宣言が話題になっています。アメリカ型の経済システムは、少なくとも日本では国民の幸せには必ずしも結びつかない、という主張です。仲間との連帯により、一体感により会社の強さを発揮していた日本システムが、派遣の多用により、会社内がバラバラになってしまい、結果として会社は弱体化し国民は不幸になっているのではないか、という内容です。

 果たしてこれから日本はどのように変化していくのでしょうか。その国の歴史や文化に基づいた経済システムを構築することが大切だ、という中谷さんの主張を私は正論だと思うのですが。

(2009年1月)

ホームページ掲載時コメント(1999年)

 99年になりました。どこの新年会に行っても話題は今年の景気のことばかり。

 もちろん景気が悪くて良いはずはありませんが、しかしある意味では景気は人々の生活の結果です。人々が生き生きと自己実現に励んだ結果が、経済学的には GDPという数字となって表現されるわけです。バブルの頃のように、数字だけがあぶくのように膨れ上がったからといって、それで国民の生活が真の意味で豊かだったかどうかは、かなり疑問です。

 われわれは父や母の世代のおかげで豊かになりました。自分が子どもの頃には夢だった、夏の暑さをしのぐエアコンですら、今では各部屋に付けましょう!、なんて宣伝しているほどです。

 しかし、どうも変です。ものが豊かになればなるほど、次は何が欲しい、何が欲しいと追い立てられていたような気がします。ものはもちろん大切。しかし、やはり心の満足があって始めて、人は幸せをつかめることも事実です。

 21世紀、我が町沼津が生き生きとした町になるためには、住む人々が夢を持ち、そして夢を持つ人々を応援する心意気を持たない限り、道路や建物で実現できるとは思えないのです。

 二十一世紀までの残された二年間に、沼津を新しく生まれ変わらせる一番可能性のある方法は何だろうか、と考えました。

 いま日本に求められているのは、新しい産業の創造です。しかも、それは生活に密着した多様な要求に、細かく応じてくれるものでなければなりません。それには我々のいま求めている需要がどこにあるのか、そして一人一人の要求は小さくとも、それを糾合すれば膨大なものになる可能性のあるものは何なのか、それを探し出す必要があります。ネットワークこそ、それを可能とするのです。

 アメリカで現実に進行しているのは、インターネットを利用し日常生活に根差した、こうした新規小規模企業群の繁栄なのです。そこで以下の具体的な提案をします。要点は既存の施設を利用すること、つまり明日からでも実施可能であること、箱物はあくまで手段であって目的ではない事、そして浜松のやらまいか精神に負けない、沼津市民の心意気と想像力が一番大切なのだ、という点です。

(1)二十一世紀までの残された二年間、希望するベンチャー企業に無料で、インターネット使い放題のパソコンを最低十台開放する。

(2)そのために必要な費用は市民から出資してもらう。一人二万円で一万人、合計二億円です。

 具体的に検討しましょう。提案の施設をどこに作るのだ、それにはいくらかかるのだ、との御指摘は良く分かります。新しくセンターを作れば膨大な費用がかかります。ところが、実現可能な施設が市内には今でも、実は41ヶ所もあるのです。どこにあるか、ですか?あるのです。それは公立の小中学校なのです。現在学校には、残念ながらあまり利用されずに埃(ほこり)を被(かぶ)っているパソコンが山のようにあります。しかも、それらはインターネットに接続すらできません。ただのパソコンは糸の切れた凧(たこ)だ、と思えば良いでしょう。それには何の意味もありません。インターネットに接続されて始めて価値があるのです。その費用はどうするのだ、という点は高いハードルです。日本の通信費が高すぎるからです。しかし、強い味方が現れています。それはケーブルテレビです。これを利用すれば、年間総費用十万円ほどで二十四時間接続が可能になります。当初は五ヶ所程度でしょうから、年間の通信費は五十万円。一ヶ所二・五人を雇用するとして、年間一千万円。五ヶ所なら五千万円で可能です。申し込みが殺到するようなうれしい事態となれば、時間貸しで対応すれば良いのです。どうです、これで明日の沼津を担うベンチャーセンターが完成します。

 節約すれば、この程度の金が沼津市に無いとは思えませんが、ここは市民のお金を集めるべきです。自分達の未来を、役所にだけ任せていてはダメだからです。自分達の未来は自分達の知恵を搾(しぼ)ることで切り開くべきなのです。将来上場企業が一つでも育てば、この程度の出資は安いものです。数十倍になって戻ってきます。

 誰が個々のアイデアの将来性を判定するか、ですか?。大丈夫です、沼津のシンクタンク、東海大学があります。利用しない手はないのです。ただし、判定委員会には一般市民、ことに女子中学、高校生、そして主婦など女性のみなさんを参加させるべきです。最新調査予測では、九十九年には米国でのインターネット利用者の過半数を女性が占めるようです。沼津の未来は女性達の感性が切り開く、と私はみているのです。有望な分野である医療、福祉の世界では、とくに女性の視点が欠かせないからです。どうです、みなさんはどう思われますか?。


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