■ いいたい放題

 今年も夏休みを利用してベトナム枯葉剤被害者支援の旅に出かけました。今回は八名と少人数の旅でしたが、新たに三名の方が参加しました。一人は元高校教師で平和運動家、沖縄問題研究家という経歴の持ち主。豊富な経験をユーモアを交えて話される様子は旅の貴重なスパイスでした。残りの二人はオーストラリアから参加された若き女性。日本でいったん職に就きながら現在はアルバイトをしながら現地の学校へ通う毎日。自分が本当にやりたいことは何なのかを探しての旅の途上といったところ。窮屈なアルバイト生活の中、自腹を切って参加される勇気と行動力には頭が下がる思いでした。


 クアンガイ省では、今年も九名の方に奨学金を贈呈しました。会のリーダーであるジャーナリスト北村元さんから、奨学生に贈る言葉を依頼されました。原稿用紙二枚にベトナムの若者だけでなく、心の中では日本の若者にも向けて語りかけました。


「本日は皆様に奨学金を贈ることができることを、心から嬉しく思います。このお金で少しでも安心して、みなさんが勉強に打ち込めることを願っています。北村元さんも私も学生時代、奨学金のお陰で勉強に打ち込むことができました。


 これからみなさんは一生懸命勉強されるはずです。でもその前に、一度は次のことを考えてみてください。何のために人は勉強するのか、ということです。もちろん幸せになるためです。では幸せとはなんでしょう。自分が本当に好きなことを見つけ、仕事として毎日それに取り組むことができること、それが幸せなのだ、と私は思うのです。自分が本当に好きな事は何なのかを見つけるために人は勉強するのです。


 映画監督の黒澤明は、こう言っています。

自分が本当に好きなものを見つけて下さい。見つかったら、その大切なもののために努力しなさい。君たちは、努力したい何かを持っているはず。きっとそれは、君たちの心のこもった立派な仕事になるでしょう。

 人の幸せには四つあります。一つは、人に愛されること。二つめは、人にほめられること。三つめは、人の役に立つこと。四つめは、人から必要とされること。そして人に愛されること以外の三つの幸せは、働くことから得られるのです。


 自分が本当に好きなことは何なのか、それを一生続けていくことができるのか。勉強することは自分発見の旅でもあります。幸せへの道は意外と遠回りなのです。時間もかかります。私たちの奨学金が、その旅に少しでもお役に立つことを心から願っています。


 健康に注意して、毎日、毎日を大切にすること。その積み重ねが幸せへの道なのです。

 みなさんの頑張っている様子を知らせてください。それは私たちの幸せでもあるのです。ぜひ夢を実現してください。応援しています」。