■20250502(金曜日:雨)

■今朝は雨の朝です。先月末に出掛けた安楽温泉・朱峰の玄関ドアの軒先には、ツバメの巣がありました。番(つがい)の燕が飛んでいるところを、見ることができました。
昔は、どこにでも見ることのできたツバメの巣も、今では、ほとんど見ることができなくなりました。燕は害虫を捕食してくれるため農家では喜ばれたり、家庭の幸福の象徴でもあったようです。
この燕の名句を尋ねてみると、大好きな与謝蕪村の句が挙げられていました。
蕪村の句 「燕の 尾のさきさす 方やみけり」 の素晴らしさを、以下の3点から解説します。
1. 「動きの一瞬を切り取った絵画的表現」
- ツバメの尾が鋭く一点を指す瞬間を捉え、まるで水墨画のような描写です。
- 「さきさす」(突き刺す)という動詞が、ツバメの飛翔のスピードと方向性を強調し、視覚的です。
2. 「余白と暗示の美」
- 「方やみけり」(あたりは暗くなった)と結ぶことで、黄昏時の薄明かりを連想させます。
- ツバメの動きと暗がりの対比が、静と動、光と影のコントラストを生み、余韻を残します。
3. 「音とリズムの調和」
- 「つばめの/おの/さきさす/かたやみけり」と、五・七・五のリズムが自然です。
- 「さきさす」の繰り返し音(サ行)が、ツバメの羽音や風切る音を連想させ、聴覚的効果もあります。
◆ この句の核心
「一瞬の動きと、広がる黄昏の空間」 を17音で圧縮した蕪村の天才性が光ります。
ツバメの鋭い尾が暗がりに吸い込まれるようで、はかなさと生命力が共存する名句です。参考までに、英語訳も添えると:
“The swallow’s tail —
pointing straight ahead
into the gathering dark.”
(訳:Robert Hass)
ただ、燕を「つばめ」と読むと、五・七・五にならないので、「つばくろ」と読むほうがゴロが良いのですが、それは素人の浅はかさなのでしょうか。
何にしても、一瞬を観察して切り取る、その鋭敏さには脱帽するばかりです。これからは春の夕暮れに、じっと目を凝らして自然を観察してみたくなりました。