■20250516(金曜日:曇)

紫陽花がお似合いの季節になります。
■今朝も小一時間早めに目が覚めてしまい、ウォーキングに出掛けました。近所を歩いてみると、季節の変化を再認識できます。普段は自宅の中に監禁されているようなものですから、通勤時間のムダがないとはいえ、自営業者の宿命です。
今朝の写真は結構きれいに撮れました。深緑の瑞々しさがスマホのカメラながら、思いの外よく捉えられています。走って通り過ぎるだけだと、決して気付かなかった変化でしょうから、歩くことも多くの収穫をもたらしてくれます。
■明日には千歳に飛びますが、以前宿泊した「ポルトムインターナショナル北海道」ホテルには、ロビーやレストラン周辺に、白隠禅師の代表作である「達磨図」や「渓間猛虎図」などの複製画が飾られていて驚きました。
「駿河には 過ぎたるものが二つあり 富士のお山に 原の白隠」と言われる白隠禅師(1685年~1768年)が再興し、多くの弟子を育てた松蔭寺(しょういんじ)は、我が家から歩いても30分ほどの所にあり、散歩がてら時々訪れています。身近にありながら、不勉強を恥じ入るばかりですが、その業績を尋ねてみると、こう教えてくれました。
白隠禅師(1686–1769)は、江戸時代中期の臨済宗の高僧で、禅の復興や禅文化の発展に大きな功績を残しました。彼の優れた業績として、以下の3点が特に挙げられます。
1. 臨済宗中興の祖としての改革
白隠は、当時の臨済宗が形骸化していたことを憂い、「公案(こうあん)禅」を重視した修行体系を確立しました。彼は独自の公案集『遠羅天釜(おらてがま)』や『槐安国語(かいあんこくご)』を著し、坐禅と公案による厳しい修行を奨励。
これにより、臨済宗は再び活力を取り戻し、現在に至るまで続く禅風を築きました。2. 禅画・書の芸術的発展
白隠は、禅の教えを絵や書で表現する「禅画(ぜんが)」の名手としても知られています。特に、
- 「達磨図」(だるまず)
- 「渓間猛虎図」(けいかんもうこず)
- 「指月布袋図」(しげつほていず)
などの作品は、大胆な筆致と深い禅の境地を表しており、日本の水墨画史に大きな影響を与えました。3. 庶民への禅の普及と「内観の法」の提唱
白隠は、難しい禅の教えを分かりやすく説くため、「座禅和讃」や「夜船閑話」などの著作を残しました。
また、心身の健康法として内観の法(ないかんのほう)」(軟酥の法)を広め、現代の自律訓練法やメンタルヘルスにも通じる先駆的な健康法を提唱しました。これらの業績から、白隠禅師は「日本臨済宗の最大の祖師」とも称され、禅のみならず、日本の文化・芸術・精神性に深い影響を与え続けています。
身近なところから見直してみる必要がありそうです。白隠禅師が苦しんだ「禅病」については、以下のとおりです。
白隠慧鶴(1686-1769)が体験した「禅病」は、現代の精神医学的視点から見ても極めて興味深い症例です。その実態と克服法について、『夜船閑話』などの自著や門弟の記録を基に解説します。
1.白隠の禅病の具体的症状
(1)身体的症状
- 「気の逆流」:臍下丹田(せいかたんでん)から突き上げるような熱感(現代で言う「パニック発作」に近い)
- 不眠と食欲不振:昼夜問わず坐禅を続けた結果、睡眠リズムが崩壊
- 振戦(しんせん):手の震えと発汗(自律神経失調の兆候)
(2)精神的症状
- 幻覚・離人感:
「壁の模様が経文に変化して見える」(『夜船閑話』より)→ 現代の「解離性障害」や「宗教的エクスタシー」に類似- 強迫的思考:
公案(こうあん)「隻手の音(せきしゅのおと)」に執着し、思考がループ化- 死の恐怖:
「息が止まりそうになる」という呼吸性アルカローシスの症状(3)当時の診断
- 白隠の師・道鏡慧端(どうきょうえたん)はこれを「禅毒」と診断:
「悟りを急ぐあまり、気(プラーナ)が脳に逆流した状態」と説明(※現代の「過換気症候群」や「双極性障害」に通じる)2.克服方法(白隠式セルフケア)
(1)内観法の開発
- 「軟酥(なんそ)の法」:
頭頂に軟らかい酥(そ=バター)が溶け落ちるイメージで気を下げる(※現在の「ボディスキャン瞑想」の原型)(2)身体的アプローチ
- 経絡叩き:
自身で開発した「白隠禅師健康法」で気脈を調整(現在の「タッピング療法」に類似)- 音声療法:
『延命十句観音経』を「音そのものが薬」として唱える(※近年の「音響療法(sound healing)」の先駆け)(3)生活リズムの改革
- 「調身・調息・調心」の三段階:
- 坐禅時間を1日4時間に制限
- 食事は玄米菜食で規則正しく
- 深夜修行を禁止(体内時計尊重)
3.現代医学からの解釈
(1)神経科学的見地
- 過度の坐禅で前頭前皮質の過活動が発生→デフォルトモードネットワークの暴走
- 白隠の症状はセロトニンとGABAのバランス異常と推測(京都大学・佐藤裕教授の分析)
(2)トラウマ療法として
- 禅病体験が後の「病人禅」指導に反映:
「苦しみそのものが悟りの種」という思想(※現代の「ポストトラウマティック・グロース」理論に通じる)(3)予防医学的価値
- 白隠が編み出した「内観-運動-唱題」の三位一体療法は、現代の統合医療モデルに極めて近い
4.歴史的意義
この体験が後に:
- 「只管打坐(しかんたざ)」批判:無理な坐禅の危険性を警告
- 「公案禅の改革」:過度の精神集中より「自然な覚り」を重視
- 民間禅の普及:『延命十句観音経』のような簡便法を開発
という禅宗史上の大転換をもたらしました。白隠の禅病克服は、単なる個人の体験を超え、「精神修養とメンタルヘルスのバランス」という現代にも通じる課題への回答と言えるでしょう。