■20220522(日曜日:曇)
■昨夜は友人Yさんの通夜でした。20年以上親しく付き合ってきたので、その寂しさはなんとも言えません。そして、少しずつその寂しさが実感されていくに違いないのです。一緒に温泉に出掛けたり、その後ゴルフを楽しんだりと、思い出は尽きません。
そんな中でも忘れられないのが、ロータリークラブでの共に過ごした思い出です。ロータリークラブの会長を私が務めたのが、2,000年から2,001年にかけてでした。ウインドウズ95が爆発的に売れてインターネットが、ようやく一般の人にも知られるようになってきた頃です。
とは言っても、スマホが普及して誰もが容易にメッセージをやり取りするのは、ずっと後のことです。21世紀に足を踏み入れようとする当時、会長として私が目指したのはクラブのIT化です。
当時まだキャンパスが沼津にあった、東海大学の視聴覚教室をお借りして、会員の皆さんとメールの講習会を開いたことも、今では楽しい思い出の一つです。
いずれ、どの組織もデジタル化は避けて通れない、というのが当時の私の認識でした。営利組織ではありませんから、デジカル化に乗り遅れたためにロータリークラブが潰れる、という可能性はありません。ただ時代遅れになるだけです。
そして次に取り組んだのが、クラブ週報の内製化でした。どのクラブでも会員の中に印刷業の方がいて、週報の作成は丸投げでした。経費もかかりますし、場合によっては発行が遅れることもありますし、何より会員が、その内容に無関心になりがちなのです。
そこで、各会報委員に仕事を分担してもらい、最後はパソコンで作成し内製化しようと考えたのです。それは今ほど容易な作業では、決してありませんでした。
さらに、会員内での反発は、思いの外大きな物がありました。会員の印刷業者から、いわば仕事を取り上げる形になることが一つ。そして、誰もがパソコンができるわけでもないのに、そうした段階でIT化を推し進めることへの反発もありました。「自分はパソコンをやるために、ロータリークラブに入ったのではない」と反発した会員もいました。
そんな中で、Yさんには将来を見据えた展望がありました。IT化は避けられない、という認識です。20年後の今、メールでなくてFAXで情報のやり取りをしている日本のあり方が、いかにも時代遅れとなり、今頃になってデジタル庁を作っているのが日本の現状です。まさに、周回遅れです。
衰退国家日本、と今頃になって叫ばれていますが、私に言わせれば、20年前から衰退は始まっていたのです。
そんな中でも、当時自分ではパソコンは自由にならなかったにもかかわらず、Yさんは自ら取り組みを始め、私の構想にも理解を示してくれました。一緒に取り組んだ頃は、本当に楽しい時期でした。
ただ会員間での反発もあり、私の後の会長を務めたYさんに、とばっちりが降り掛かったのは、本当に申し訳ないことでした。当時の会員の行動を振り返ると、大変勉強になることばかりです。変革期に望んで、人はどのように行動するか、というケース・スタディです。
変わらずにいる方が、人は楽なのです。いま不自由がないのに、なぜ変わる必要があるのか。多くの人は、そこで思考が止まってしまいます。そして、変わろうとする人の足を引っ張る輩(やから)が、立ちはだかるのです。自分が変わらずに済むために、人の足を引っ張る輩です。
たぶん、どこの組織でも当時、同じことが繰り広げられたはずです。そして変わることができた組織が生き残り、旧態依然の組織は衰退していったはずです。
20年経ってみると、誰の目にも明らかなことも、当時は薄ぼんやりとしか見えていなかったのです。
Yさんは、その後自らの会社の変革にも取り組み、全く新しい分野にも進出。今では、当時とは全く異なる分野に取り組む会社に変貌させました。社長は息子さんに譲っても、世の中の流れには、常に鋭い嗅覚を働かせ続けていたYさん。
ともに過ごした本当に楽しかった時間は、これからも私の貴重な財産であり続けるのです。